【分類 サケ科タイヘイヨウサケ属】
ヤマメ(山女魚、山女)は、サケ目サケ科に属する魚であるサクラマスのうち、降海せずに、一生を河川で過ごす河川残留型(陸封型)の個体のこと。北海道から九州までの川の上流などの冷水域に生息する。
ヤマメは、北海道、東北地方では「ヤマベ」(一部地域)とも呼ばれる。2年魚でも全長は20cm程にしかならないが、ダム湖などに下り再び遡上してくるものは40cmに達するものもいる。秋期に河川上流域のおもに本流の砂礫質の河川に産卵床を形成し1腹200粒ほどの産卵をするので、保護を目的として漁協や県などの自治体などが管理する河川では10月から4月頃までが禁漁期間となっている。 新潟県での回帰率は、0.03%と推定されている。
ヤマメの分布
天然での分布域は本州の関東以北の太平洋岸と日本海側全域、九州の一部に分布し、アマゴと分布が分かれていたが、近年盛んになった放流により分布が乱れている。体側には青色のパーマークが並び、全長40cm位まで成長する。神奈川県は、太平洋岸の天然ヤマメの南限とされている。静岡県はアマゴの分布域といわれ、一部の地域では、混在しているものと考えられている。もともとの生息魚種を無視した安易な放流により、神奈川県や山梨県内にはヤマメとアマゴの交雑種と考えられる中間的な特徴を持った魚が釣れることがある。
宮崎県と熊本県にまたがる沢には、「昔からヤマメが生息していた」との、地元養魚業者の話もある[要出典]。地元では、他県産放流種との混種を避けるため、地域住民が漁協の放流を許さず、今に至っている。確かにそこの源流域には、明らかに下流とは別種と思われるヤマメが存在する。
文献には厳密な境は出てきていないが、放流が始まる前までは神奈川県の相模川水系にはヤマメが生息しており、神奈川県平塚市に流れている花水川水系にはアマゴが生息していた。この位置がアマゴとヤマメの生息域を分けていたとされる。
ヤマメの特徴
体の側面に上下に長い「木の葉・小判状」の斑紋模様(パーマーク)があるのが特徴で、成長とともに次第に薄くなり、30~40cmクラスになると一般には、サクラマスのような銀色に近い魚体となるが、熊本県の沢においては大型ながら、紅みを残した魚体(通称・紅ヤマメ)が地元の釣り人に確認されている。また下北半島の大畑川にはスギノコと呼ばれる普通のヤマメと比較すると、体色が濃くて青緑色を帯びており、パーマークがやや小さいヤマメが生息している。 通常ヤマメはイワナよりやや下流に生息するとされるがスギノコはイワナよりも上流に生息している。生息上限温度は24℃で、24℃で餌を食べなくなり26℃で死亡する。
繁殖期になると、体全体が黒っぽくなり、また薄い桃色から濃い紅色までの婚姻色が体側からヒレなどに不定形に表れる。降海型個体は産卵活動を行うと死亡するが、河川残留型個体は死亡せず翌年2回目の産卵を行う。
イワナと同様現在一般に各地で見られるヤマメは、その多くが養魚繁殖魚を放流したものであり、これがその地域に本来生息していた個体と混血し、純粋な地域型個体が残っている河川はかなり少ないと考えられている。また、ヤマメの生息域にアマゴ、あるいはアマゴの生息域にヤマメが放流されたためにヤマメとアマゴが置き換わってしまったりヤマメとアマゴが交雑しアマゴとヤマメの中間的な魚が生まれ雑種が生息している地域があり問題となっている。また堰堤等により産卵場所が限られてしまった河川や本来イワナとヤマメはイワナがヤマメより上流に棲みヤマメがイワナより下流に棲むと棲み分けているがイワナ域にヤマメ、ヤマメ域にイワナを放流することによりイワナと交雑することもわかってきている。
カワシンジュガイの幼生がエラやヒレに付き移動する。
ヤマメの亜種
サツキマス
学名 Oncorhynchus masou ishikawai
アマゴの降海型。体長は40cm 程度でサクラマスより小さい。
渓流釣りのブームを受けヤマメの生息域にアマゴを放流する行為が目立ち、その結果アマゴが生息しないはずの河川でまれにサツキマスが釣れることがある。
アマゴ
サツキマスの河川残留型(陸封型)。神奈川県西部以西本州太平洋岸、四国、九州の一部以前はヤマメと分布が分かれていたが、近年盛んになった放流により分布が乱れ、混在するところがある。神奈川県西部はアマゴの分布の東限といわれている。ヤマメとの違いは、側線の上下から背部にかけて朱点が散在することである。
無斑型のアマゴでイワメ(学名:Oncorhynchus iwame)というアマゴの突然変異で生まれたと思われる魚がいる。このイワメは大分県・三重県・岐阜県・神奈川県・愛媛県の一部の流域に生息しており絶滅危惧種に指定されている。 銀毛化したアマゴ(シラメ)やヤマメに似ているがイワメの無班は劣性遺伝する事が分かっておりアマゴ・ヤマメと比べてもサイズも小さい。ヤマメにも無班型が生まれる事があるがこちらはイワメとは呼ばない。 釣り人の間ではヤマメとイワナの交雑種をイワメと呼ぶことが多い。
ビワマス
学名 Oncorhynchus masou rhodurus
琵琶湖固有種。栃木県中禅寺湖、神奈川県芦ノ湖、長野県木崎湖にも移植。河川残留型も報告されているが、ほとんどが琵琶湖に降りる。
幼魚はアマゴ、成魚はサツキマス、サクラマスによく似ており、以前はアマゴの降湖型だと考えられていたが、現在では別亜種とされている。亜種名は決定されていない。アマゴ、ヤマメに比べて眼が大きく、顔が優しく見える。体側の朱点は全長20cmになると消失する。9月~11月に産卵のため琵琶湖より流入河川に遡上する。陸封期間が長かったことから、海水耐性が失われている。
タイワンマス(サラマオマス)
学名O.masou formosanum
台湾の大甲渓にすむヤマメの固有亜種。サケ科の南限と考えられている。
ヤマメの交雑種
ホンマス
中禅寺湖 に放流されたビワマスかサツキマス(アマゴ)とサクラマス(ヤマメ)が自然交雑したものと考えられている。小型の魚はヤマメ・アマゴに似ており体側に朱点を持つものと朱点を持たないものがおり大型魚はサクラマスに似た固体とビワマスに似た個体がいることからサクラマスとビワマスの交配種の可能性が高い。中禅寺湖 や湯の湖に生息しているほか木崎湖にもキザキマスと呼ばれているホンマスに似た魚が生息している。
カワサバ
イワナとヤマメの交雑種でヤマメの特徴であるパーマークがあるが、背中の斑点がイワナの特徴である流れる傾向がみられ斑紋が海の魚のサバのように見える事からカワサバと呼ばれるようになった。地方や魚によって体の模様はバラバラ。温度耐性試験の結果両親のイワナ・ヤマメよりも高温に強いという事が分かった。養殖場ではどうしてもヤマメとイワナの交雑種が生まれてしまい、カワサバをF1扱いしている管理釣り場も多い。多くの管理釣り場などではヤマメに混じって普通に生息している可能性が高いという。また自然の河川でも堰堤等により産卵場所が限られてしまった河川や本来イワナとヤマメはイワナがヤマメより上流に棲みヤマメがイワナより下流に棲むと棲み分けているがイワナ域にヤマメ、ヤマメ域にイワナを放流することによりイワナとヤマメが交雑することもわかってきている。カワサバのことをイワメと呼ぶ釣り人が多いが正確にはイワメは無班型のアマゴの事である。
ヤマメの料理
食べ方は、小さなものは内臓を除いてそのまま唐揚げに、酢に浸して酢漬けで、大きな物は塩で身を締めてから塩焼き、その他、癖がない味なので大抵の料理にできるが、寄生虫がいることがあるので生では食べないほうが安全。但し、海から遡上する魚がいない水域で捕獲したならば、刺身も可能。
宮崎県三股町のしゃくなげの森では、養殖したヤマメの卵を特産品として販売している。販売する卵は、その色合いから「黄金イクラ」と名づけられている。
ヤマメ、アマゴの渓流釣り
管理釣り場での釣りは、ニジマスがメインである。難易度はそれほど高くない。
河川でのヤマメ、アマゴ釣りは、難易度が高い渓流釣りである。対象魚であるイワナ、ニジマスなどに比べ大変警戒心が強い。釣る際にはヤマメに人の気配を感じさせないことが大切である。
なお、竿は、振り疲れないように軽めのものが良い。
エサを使った釣法は、目印をつけたミャク釣りである。糸は、非常に細いものにし、鉤もできれば小型にしたい。近年はゼロ釣法が流行している。エサは、春先の水棲昆虫の少ない時期はイクラが良い。河川の増水時は、ミミズが有効。普段はできる限りカワゲラ、カゲロウ、トビケラなどの河川に生息する川虫を使用すると良い。アタリは変化に富み、微妙な上、俊敏なので目印の動きをよく見て、素早くアワセる(鉤を魚の口に掛ける)必要がある。この難しさから川釣りの中でも評価の高い釣りである。尺上(30センチ以上)のヤマメ(アマゴ)は渓流釣師の憧れである。
渓流釣りでは、地域によって猪や熊に遭遇することもあるため、足跡や糞がないか注意する必要がある。また、上流部では沢登りに近いところもあるので、必要に応じ道具を準備する必要がある。なお、渓流の周辺では、山菜採りもできる。
本流、サクラマス釣り
ヤマメ(アマゴ)は本流(河川上流域でも下流部に位置し、川幅が50m以上あるところ)でも釣ることができる。渓流域よりもエサが豊富なため、魚は大型に育ち、40cmを超えることもある。また降海型のサクラマスが溯上する河川では、シーズンなればこちらも狙うことができる。サクラマスは60cmにもなり、あまりにパワーが強大なため専用の本流竿がシマノやダイワやがまかつなどの一流メーカーで開発されている。本流竿では大型のヤマメやニジマスなども併せて狙うことが出来る。サクラマスは河川を遡上中はほとんどエサを口にしないため、「100日通って1回掛かるかどうか」と言われているほど難易度の高い釣りである。
近年は、ゼロ釣法が大変人気であり、タックルの進化がこの釣り方を可能にした。 渓魚が、掛かったら慌てずじっくり時間をかけて取り込む必要がある。 ゼロロッドもシマノやダイワやがまかつなど各社から発売されている。